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少年の前には階段があった。
長くて細い階段が。
広く無機質な空間にいた少年は階段に向かって歩きだし、一段目に足をかけた。
踏んだ瞬間世界が歪み、一瞬にしてその空間が青く染まった。
少年は好奇心でもう一歩を踏み出す。
足元が緑で覆われた。
もう少年の好奇心は止まらない。
一歩一歩踏みしめて階段を昇る。
止まることのない水の流れができ、そこに生き物が生まれる。
緑も階段を踏みしめるごとに広がり、緑の中で生き物が生まれた。
一歩一歩着実に上がり、少年に似た生き物も生まれた。
文明ができ、住みやすい空間へと変化する。
階段はまだまだ天へと伸びていて、この住みやすい世界をより良くしたくなった。
少年は一歩一歩踏みしめて上がることを忘れ、階段をかけ上がった。
空間の変化にも気づけないほどに。
走って、走って、走って。
疲れはてた少年は立ち止まって自分が創った世界を見た。
少年は立ち尽くすしかなかった。
―…もう後戻りはできない。
これまで登った階段を振り返った少年は、自分の創った世界に向かって飛び降りた。
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