1 はじまる

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帰宅。ボロアパートに一人暮らしの里佳子は部屋に入るとすぐにおでんよりも先に電話をしようと携帯を取り出した。 緊張しているのか、鼓動がドクドク五月蝿くなっている。 電話していいんだよね?ちょっと、どんな内容なのか聞くだけだもんね。そう、聞くだけ、聞くだけ。 通話ボタンを押せば繋がるものの、里佳子はまったく押せなかった。こういう時、なんて言ったらいいんだろう?片思いの相手の番号をゲットして、電話して告白しようとする時と同じ気持ち?いやいや、違う違う。そんな幸せな気持ちではない。両親が死んだって伝言があって、それが本当かどかを確認するために親の携帯に電話をしようとする気持ち。いや、これも違うかな。そこまで暗くない。友達が結婚・・・違うな。よく当たる占い師さんに電話・・・近い・・・かな? つか、今はそんなこと考えてる場合ではない。 現実に引き戻ってくれた里佳子は少し、ズレた妄想をしていたおかげで気分が先程より晴れた。 まだボタンを押す勇気は必要だったが、一歩踏み出せた感じだ。 深呼吸をして、いざ、押します!
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