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「あんたなんで美術品にさわってんの」
都に首根っこを掴まれ甲冑から引き離され、かなえは黙って少し離れたところにある特設コーナーを視線で指した。そこには、
『無料体験コーナー!
見て! 触って!
中世の騎士達のきぶんに君も浸ってみよう!』
という看板と一緒に安っぽい甲冑のレプリカが設置されていた。
くらっと軽い目眩を起こして都は頭を抱えた。
「あ、あんたねぇ……!」
ぷるぷる
「あれはどう考えても、あのレプリカだけだから!
美術品は駄目なの!」
何故かやっぱりお母さ、いや……で、レプリカを指差して怒鳴る都に、かなえは堂々と言い放つ。
「そんな事は看板に書いてない。
だから、この黒い甲冑でもいい事に決めた。 私が。」
「決めんな!」
都は思わずつっこんでしまった事を後悔した。
「看板に詳細を書かなかった美術館側の落ち度だ。
だ・か・ら」
無表情の顔に喜色が浮かび、かなえは甲冑を見上げて無意味に胸を張った!
「壊さなければオールOKだっ!」
んなわけないだろ。
心の中でつっこむ事すら出来ずに頭をかかえる都。
「監視カメラでも音声はひろえないし言い訳はいくらでも出来るからなっ」
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