祖父が死ぬらしい

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僕は手の間に挟んだタバコの先端が、ジリジリと燃えていく様をじっと見下ろしながら、父親にどのような言葉をかけるべきか考えていた。 実は、言いたい言葉ははっきりとしていた。 それでも、それは多分、今の父親に言うべき言葉ではない。 「お前もいろいろ予定はあるだろうが、できるだけ早くこっちに戻ってこい。もう、最後かも分からんから」 僕はしばらく黙った。 すんなりと返事が出てこなかった。 言いたかった言葉が余計にはっきりして、僕の頭の中をブンブン飛び回っている。 「よかったじゃないか」と僕は言いたかったのだ。
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