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死神の迎えが来た祖父はやっと「本当に」死ねるのだ。
よかったじゃないか、自然な事だよ、むしろ、今までが不自然過ぎたんだ。
「分かった。夜までには病院に行くよ」
僕が実家を出ることを決めた理由のひとつに、祖父のそんな姿というものがあったのかもしれない、と電話を切りながら思った。
そして祖父をそんな姿にした、環境に対する憎しみが。
否。
僕はすぐに、否定した。
そんなわけはない。僕は祖父をそれ程には愛してはいなかった。
彼の為、真剣に思い悩んだ事など一秒たりともなかったはずだ。
友人や、音楽や、小説や、セックスや、酒。僕には考えるべき問題が、そして耽るべき対象がたくさんあって忙しかった。
わざわざ死人の事で思い悩む時間など僕にはなかったし、もし誰かからそんな時間をもらえるのだとしたら、僕はその時間を全く別の事に費やしたに違いない。
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