半年ぶりの地元

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仕事もせず、新しい土地でただ一人、安い酒と安い文学にまみれているだけの生活に価値などない、お前はそんな現在にどうにかして意味を持たせるために、過去を激しく憎む必要があるのだ。 そう呟いているのは他でもない僕である。 当然だ。 誰かの呟きが脳内に直接聞こえてくるほど僕はアルコールやその他の刺激物に中毒していない。 その呟きはただ、あらためて否定されるためだけに僕がわざわざ用意したスケープゴートなのだ。 だから僕はちゃんと付け加える事にした。 「あの街じゃ誰も僕の事を知らない。それがこの街にはなかった価値だよ」
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