半年ぶりの地元

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おばさんは顔をしかめている。 制服はこれ以上ないというほどに地味で貧相だが、首に派手なスカーフをまいている。 可笑しくて僕は心の中で笑った。 そして同時に、自分とおばさんの間にあるあまりの違いに恐怖した。 自分が理解できないであろう人間からの、責めるような視線はとても恐ろしい。 思わず声を出した。 「おじいちゃんが、死にそうなんです。お見舞いに行かないと」 この売店で総合病院の場所を聞く人間も多いのだろう、僕がそう言うとおばさんは少し安心した表情を浮かべて、丁寧というよりは、ありがた迷惑なほど詳しい道順を教えてくれた。
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