郊外の病院

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十分もかからないうちに病院に到着した。 初めて訪れたその病院は、駅の小ささからは想像できないほどに大きく、そして、古かった。 クリーム色に変色したコンクリートの壁が、無言で迫ってくる風景はかなりの息苦しさを僕に感じさせた。 昔に建てられた病院や学校や橋などから、どこか切実な印象を受けるのはなぜだろう。 歳を取った建物はもしかしたら人格を持つのかもしれない、と僕は思った。 人間という「外部」を得て、自らの存在を主張するのかもしれない。 光によって初めて存在を許される、暗闇と同じように。
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