郊外の病院

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平日だという事もあって駐車場に車は少ない。 僕は両手に一つずつワンカップを持ち、咥えタバコをしながら入り口に向った。 最後なんだから、好きなものを飲んだっていいじゃないか、と僕は思っていた。 昔、まだ祖父や祖母と僕の家族が同居していなかった頃、祖父の家に遊びに行くと祖父はいつもこれを飲んでいて、そしてかなり酔っ払っていた。 時々思い出したように汚い言葉を祖母に浴びせ、無視され、おとなしくなり、そして、嫌がる僕にその透明な液体を無理やり飲ませた。 そういう時の祖父の顔が僕は嫌いではなかった。 あの顔がもう一度見たいと思った。 そして、そうでもないかな、とすぐに思った。
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