郊外の病院

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酒を持って面会に来る事が非常識である事くらい僕は分かっていたので、病室の案内を聞くときにはワンカップを上着のポケットの中に隠していた。 ガードマンの格好をした背の低い受付が、祖父の名前を聞き、慣れた感じでパソコンを操作すると、病室はすぐに分かった。 エレベーターの場所を聞き、ありがとうございます、と立ち去ろうとすると、老ガードマンは同情的な声でおじいさん? と聞いた。 はい、と言った。 そう、と言ってガードマンは目を細めて優しく微笑えみ、何度か頷いた。 「あんたが会いに来てくれて、おじいさんきっと嬉しいだろうね。うん。本当に嬉しいだろうねえ」
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