祖父が死ぬらしい

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ライターの先端で揺れる頼りない小さな炎は、まるで洞窟の中で演説する新興宗教の教祖のようだ。 薄オレンジ色の物体が、ゆらりゆらりと、揺れている。 それに合わせて周囲の闇は呼吸する。 光が生まれれば、闇も主張を始める事を僕は知っている。 否。 自らを浸食する光が存在して初めて、暗闇は輪郭を設定し得るのだ。 形としての肉体を手に入れるのだ。 必要悪。 人間だって同じだ、と僕は思った。 僕という人間が存在していると実感する為には、自分とは異なる存在がどうしても必要なのだ。
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