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――――ピンポーン。
大きく空気を吸い込んでちっちゃく押したインターホン。
返事を待つこの時間はとてももどかしいけれど。ただ返事を待つ。あなたの声を早く聞きたくて。
だけど返事はない。何度押しても返事はない。ただインターホンの余韻が寂しく切なく残るだけ。
やっぱり今日は逢えないよね。
優子の仕事が忙しいことなんて陽菜にだって分かってる。
だけど、今日は無性に逢いたくて。
このまま夜明けまでここで待っていようか、なんて変なことを思っちゃう。
多分、今日の陽菜は可笑しいの。
しばらく優子が来るのを待った。だけど、いくらたっても来ないから、優子に電話をかけてみる。あーなんか、陽菜が好きみたいじゃん。
しばらくたっても優子の声が聞こえることはなかった。ただ電話の機械音が虚しく響くだけ。
近所の明かりが少しずつ消えて、今日も優子に会えないまま陽菜は優子の家に背を向けた。
「もう、帰ろ。」
なんてボソッと小さく呟いて。
アスファルトの地面をゆっくり歩き出した。だけど、1人きりのアスファルトは足音が寂しすぎて。優子のいないアスファルトはなんだか凄く寂しすぎて。
わざと陽菜の家を遠回りで歩く。
もしかしたら、会えるんじゃないかって。
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