言えない気持ち。

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好きな人いるの? 何でかな。訊けないよ。別に何とも思ってないのにさ。声が出ないよ。 何あたし怖がってんの。別にさっしーに好きな人がいたってさ、あたしには関係ないでしょ。 「も、もえのちゃん...?」 口を開けないままのあたしに、さっしーは声を掛ける。またちょっと吃りながら。 だからあたしは、さっしーを見ずに黒板を見ながらちっさく口を開く。 「さっしーってさ、」 「は、はい」   「好きな人とかいんの?」 いつの間にか授業が終わってたこの賑やかな教室には、あたし達の会話は聞こえるはずがなくて。はずがなくて。 「みんなー萌乃が指原に好きな人が何かって聞いてるぞー!」 「え?萌乃って指原好きなの?」 「え、ビックニュースじゃん!」 騒ぎ回るこの3人はクラスのお調子者の3人で。この3人に知られたら、すごい噂が立つってよく聞いていた。 あたしはちっちゃくため息を吐く。何であたしが指原なんかと...。 いちお誤解を解きたくて、慌ててその話題を掻き消す。 「ち、ちがうの。別に好きとかじゃなくて」 「じゃあ何なんですかー?」 ハァ、もうめんどくさい。あたしは一言吐き捨てた。もう勝手にすればいい。別に噂が広まったってあたし達の間には何も生まれないんだから...。 クラス中に歓喜の声が上がる。 さっしーは何故か嬉しそうで、りっちゃんはやっぱり悲しそうで。 あたしはどうすればいいか分からない。 さっしーのこと好きだけど。りっちゃんのことも大切で。 あたしにとっては、2人とも大切だから。そんな2人が結ばれるのは、嬉しいことだと思う。 だから、あたしは、2人の幸せを… 願うべきなのに。  
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