ミルクティは恋の味

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いやいや、駄目駄目。 ここは我慢。 拳をぎゅっと握って、さっさとこの場を立ち去ってしまおう。 「ねぇ、何突っ立ってんの?なんか私達に文句でもあるわけ?」 「何あんた?ちょっと男子に人気あるからって、調子乗ってんの?」 拳は握るだけ握るだけ。 こんなの無視すればいい。 さっさとカフェオレ取って、教室でまったりするんだ。 「何なのこいつ。お~い、聞こえてんの~?」 「うわ、ガン無視かよ。男にはいつも媚売ってるくせに、やっぱあれ計算だったんだ」 反射的に、私は彼女達を睨んだ。 どうしても、黙っているのは限界だった。 言いたいように言わせておくことが、私には我慢できなかったから。 男の子に媚なんて、そりゃ多少は売ってるけど、そんな風に言われるのは納得がいかない。 震える拳が、私の意思とは関係無く持ち上がった。 「女の子に拳は似合わないと思うよ」 私の腕を持ち上げたのは、私の眠れる闘争本能なんかじゃなく、突然目の前に現れた男子生徒だった。 「へ、え、あ……誰?」 戸惑う私に彼はニコリと笑い、そのまま腕を引っ張った。 「さ、行こう」 強引に腕を引かれながら、私は彼と共に廊下を駆け出した。 「行くって、どこ行くの?」 「さぁ?地平線の彼方までとかでいんじゃない?」 そんな適当な台詞に、何故だか私は心が躍った。 嫌な現実から突然私を引っ張り出してくれた彼に、私はこの瞬間ときめいてしまったのかもしれない。
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