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「俺はめちゃくちゃ楽しかったよ」
一通り見終わった優の顔は、初対面の女の子でももれなく恋に落ちてしまうんじゃないかってくらい、憎たらしいニヤケ顔だった。
「めちゃくちゃ楽しそうだな。フランちゃんの写真集ができそうなくらい。完成したら是非売ってくれ」
優は案の定写真を撮るのも上手く、この出来なら苗代学園内で売ればベストセラー間違いなしだろう。
「それは駄目だね。欲しけりゃ自分で撮りなよ」
「ってホントに作るんかい!?今日の趣旨変わってないか?ホワイトタイガー撮りに来たんだろ?」
俺が言うと、優はカメラを片手で持ち、間を取ることなくシャッターを切った。
「ほら、撮ったよ珍獣」
そう言って見せられたカメラの液晶には、俺の顔面がドアップで映し出されていた。しかもピンボケ。
クソ、これほどイケメンを憎いと思ったことはない。
「おいこら、喧嘩売ってんのか?」
「別に」
なんだ?機嫌悪いのかこいつ。
珍しく爽やかじゃないな。
「何?もしかして俺とフランちゃんが仲良さげだったから妬いてんの?」
返事はなく、優の頭は徐々に左へと向いていき、目線が斜め下へいったところで、固まった。
図星ってことか。
可愛いなこいつ。
「ったく、フランちゃんと話がしたいなら、黙って写真ばっか撮ってないで、俺みたいに積極的に話しかければいいじゃないか。優が言ったんだろ、積極性って」
俺がそう言うと、優は溜め息と共にしゃがみこんだ。
「心はいいよね、単純で。思い付いたことすぐ実行できるんだから。普通、積極的になれって言われてすぐコロッと変われるもんじゃないよ」
単純?
そりゃそうだ。あれやこれやと考えてる暇があったら、思い付いたことを片っ端からやってみた方がいい。
駄目だったらすぐにやり直す。
シンプルに、愚直に。
それが俺の信条だ。
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