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「思い立ったが吉日ってことだよ。行動力は大事だぜ?」
俺が手を差し伸べると、優は一瞥し、再び溜め息を吐いてから手を取り立ち上がった。
「そうだね。心を見習って、アクティブにやってみるよ」
「おおう、天下の坂井様に見習ってもらえるだなんて感激だなぁ」
「天下だなんて、またテキトーな」
付き合っていて気付いたが、優は自分がどうしようもなく女にモテる体質だという自覚がないらしい。
ちょっと小耳に挟んだ話だと、坂井優は苗代学園男子の中であまりに女子に人気がありすぎるため、「抜け駆けはなしよ」的な暗黙のルールで特に親しくもない女子が告白したりってのはまずないらしい。
そんでもってこの通りの奥手だもんだから、モテるくせに周りに女性の影はないという。
これじゃ宝の持ち腐れじゃないか。
使わないならそのイケメン分けてくれ。
「ところでさ、こないだのアレ、やっぱり訊いてみてもいい?」
カメラを仕舞いつつ、優は言った。
「ん?こないだって?」
「球技大会の日だよ。訊きたいことがあるって言ったじゃない」
「あー、あれか。何?今更」
本当に大したことはない素朴な疑問のように、優は口にした。
「心は、掛布さんのことが好きなの?」
俺は固まった。
優ははっきりとフランちゃんが
好きと言ったわけじゃないが、フランちゃんに想いを寄せていることは明確だ。
俺が気付いているということも優は自覚している。
つまり、俺がライバルになってしまうのかどうか、優は確認したいんだ。
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