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「喉渇いたな」
陽が少し傾き始め、全身が汗でびっしょりになった頃、ライトは剣を鞘に納めた。
「うん。泉行く?」
マールもライトに倣<ナラ>って剣を鞘に納める。
訓練をしながら森の中をかなり動きまわっていた。
「けっきょく魔物なんか出なかったな。ホントにいるのか?」
足を泉へと向けながらライトは少し残念そうに言った。
泉は森の中心近くにあり、この森で訓練をしている時にはかなり重宝している。
「ん~。でもミラーネさんがそんな嘘つくとも思えないし」
「そうなんだよな~」
ミラーネは細工職人であり、頑固で知れ渡っていた。
結局、何の解決も無いまま泉の見える所まで来ていた。
「誰かいるぞ……」
二人に緊張が走る。
「魔物かも知れない。用心して行こう」
二人は屈み込み、足音を消して樹の影や岩影を渡って泉へと近づいて行く。
鳥の鳴き声で多少の音は聞こえないはずだが、近づいてみないと、こちらにも向こうの状況が解らない。
大きい岩影に身を隠し、剣の柄に手をやった。
この岩から顔を出せば、泉はすぐ目の前である。
ライトは物音を立てないように注意を払いながら、ゆっくり泉を覗いた。
それは泉で水浴びをしていた。
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