第一章 魔物の森

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全速力で森の外まで逃げて来たライトとマールは、両腕を投げ出して草原に寝転んだ。 まだ踝<クルブシ>の少し上までしかない草が二人を優しく包む。 荒い息が二人の胸を大きく上下させている。 「顔見られたかな?」 ライトは額から次々に流れ出る汗を右の拳で拭った。 「どうかな……一瞬だったから顔は見られてないような気もするけど……」 マールもしゃべりながら汗で額に張り付いた髪をどけた。 「マールが声出すから……」 「ライトなんかずっと見てたじゃないか……つついても全然気付かないし……」 二人はそのまま沈黙し、息が整ってもしばらくの間、朱くなりかけた空を眺めていた。 少しだけ冷たい風が草原を吹き抜け、二人の汗が引いていく。 「あれが魔物なのかな?」 マールは寝転がったまま、首だけライトの方を向いて尋ねた。 「まさか! 耳は動物の耳みたいだったけど……」 ライトはまた沈黙し、先ほどの光景を思い出して少し頬を赤らめた。 二人は今までにあれほど美しい少女を見た事がなかった。 人口百人にも満たなく、半分近くが年寄り子供という村では、当然といっても可笑しくない事ではあるのだが。 「動物の耳か……でも可愛かったね!!」 マールが上半身を起こし、屈託のない笑顔でライトに向かって言った。image=439843153.jpg
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