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全速力で森の外まで逃げて来たライトとマールは、両腕を投げ出して草原に寝転んだ。
まだ踝<クルブシ>の少し上までしかない草が二人を優しく包む。
荒い息が二人の胸を大きく上下させている。
「顔見られたかな?」
ライトは額から次々に流れ出る汗を右の拳で拭った。
「どうかな……一瞬だったから顔は見られてないような気もするけど……」
マールもしゃべりながら汗で額に張り付いた髪をどけた。
「マールが声出すから……」
「ライトなんかずっと見てたじゃないか……つついても全然気付かないし……」
二人はそのまま沈黙し、息が整ってもしばらくの間、朱くなりかけた空を眺めていた。
少しだけ冷たい風が草原を吹き抜け、二人の汗が引いていく。
「あれが魔物なのかな?」
マールは寝転がったまま、首だけライトの方を向いて尋ねた。
「まさか! 耳は動物の耳みたいだったけど……」
ライトはまた沈黙し、先ほどの光景を思い出して少し頬を赤らめた。
二人は今までにあれほど美しい少女を見た事がなかった。
人口百人にも満たなく、半分近くが年寄り子供という村では、当然といっても可笑しくない事ではあるのだが。
「動物の耳か……でも可愛かったね!!」
マールが上半身を起こし、屈託のない笑顔でライトに向かって言った。
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