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何者かが近づいて来る音がする。
「メイ?」
いくら意識が朦朧としていたとはいえ迂闊であった。
その足音は一人や二人の物ではなく、五人以上のそれであったのだから。
足音が速まり、少年に近づいて来る。
「クッ……」
少年はボロ雑巾のような体にムチを打ち、剣を杖替わりにして立ち上がると、剣を正面に突き出して構えた。
少年はこんな所で無駄に命を落とす訳にはいかなかった。
多くの命に関わる重大な使命を預かっているのである。
月明かりの中に剣を手にした男達が姿を現した。
「こんな所に居やがったか……へへへ」
リーダーらしき細身の男は下卑た笑い声をあげ、少年の顔には苦悶の表情が浮かぶ。
「……七人……か……」
仲間が居ればなんとかなったであろう。
いや、少年の体調が万全ならば少なくとも生き残る事はできた。
少年の剣の腕はそれほどの物であった。
しかし、今は仲間もおらず、少年の体力は微塵も残ってはいない。
今にも切れてしまいそうな意識の糸を繋いでいるだけで精一杯である。
事実、既に一歩とて動く事はできなかった。
少年はジリジリと詰め寄って来る相手に、剣の切っ先を揺らして牽制する。
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