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「ライトー!」
村の方から黒髪の少年が走って来る。
栗色の髪の少年は立ち上がり、剣を掲げ上げてそれに応えた。
「マール! 遅いぞー!」
マールと呼ばれた少年はライトの元まで来ると膝に手をついて呼吸を整える。
「ゴメン! ちょっと親父につかまっちゃってさ……」
ライトはまだ荒い呼吸をしているマールの肩に手を置くと、「よし! 行くか」と森の方へさっさと歩き出した。
「ちょ……ちょっと待ってよ~」
マールもすぐに後を追う。
二人は剣の訓練をする為に、毎日この森へと足を運んでいた。
木々が丁度良い障害物となるからである。
勿論、正面から向き合って剣を交えもするが、通常、戦闘になれば、どこから武器が飛んで来るかわからず、剣を大きく振れない事もあるに違いないとマールがこの訓練方法を言い出したのである。
ライトもすっかりこの訓練が気に入り、剣の腕もめきめきと上達していた。
森の入り口まで来た所で、マールが噂話を口にした。
「最近、この森に魔物が出るらしいよ」
「魔物?」
ライトは振り返り、マールの黒い瞳を不思議そうに見つめた。
「うん。隣のミラーネさんが見たんだって」
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