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「デカイのか?」
ライトの栗色の瞳に、期待と不安の入り交じった光が輝く。
「ん~。僕も直接聞いた訳じゃないから分かんないけど、食べられそうになったんだって」
それを聞くとライトは鞘から剣をするりと抜き、森へと向けた。
「よし! 出てきやがったら俺が倒してやる!」
ライトの声に力が込められる。
一歩森へと入ると、今の季節はまだ少し肌寒く、鳥の鳴き声がいたる所で響いている。
木々の香りが全身を包み込む。
二人は森の中まで入ると訓練を始めた。
ギンッと刃と刃がぶつかる音に驚いて鳥達が慌てて飛び立つ。
マールはライトよりも少しだけ小さいが、ここ一年の身長の伸びるスピードは驚異的だった。
一年前はライトの肩くらいまでしかなかったのだ。
それに剣の腕も今や村の中ではライトに次いで二番である。
だが一方で、騎士になるという夢に関しては消極的ですらあった。
マールは家を継いで親を助けたいという思いが強かったのである。
それは、マールの両親が歳をとってからの子供である事にも起因していた。
兄弟は無く、自分が家を継がなければならないという思いを幼少の頃から抱いていた。
仕方の無い事ではあったが、ライトにはそれが残念だった。
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