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~亜久津side~
『おい、待てよ』
目の前が急に光って
中から人間が
女が出てきた
その後すぐに
そいつの鞄が
そいつの腕の中に落ちてきた
俺が言葉を発せないでいると
そいつは鞄の中から
なにやら紙をとりだし読み始めた
読み終わるなり
目の前の俺を無視して
立ち去ろうとした
とっさにその女の手首を掴んで
引き止める
ゆっくり振り返る女
俺より低い身長
一般的に言う美形だ
透き通るような
ショートの銀髪に
整った顔立ち
その中でも一番印象的なのは
大きなダークパープルの瞳だ
驚くほど澄んでいるのに
光が入っていない
そう、まるで
死んだ金魚かなにかのような
瞳だ
それからの視線は
凍てつくように冷たかった
その表情も
関係があるのかもしれない
無表情
それ以上に当てはまるものがない
幼い容姿に似つかわしくない
その表情
面を突き合わせた瞬間
背筋がゾクッとした
「何?」
透き通った女の声にはっとした
眉根を寄せ睨むように
見つめてくる
いや睨まれている
『てめぇどこから来た』
出なくなっていた声を
無理やり絞り出して
負けじと睨み返す
「…そんなの僕が聞きたい…」
『は?』
つい、と逸らされる視線
掴んでいた手を離しながら
小さく囁かれた言葉を問い返す
「………」
『………』
何も答えない
沈黙が流れる
『チッ…』
「僕、もう失礼するよ」
『あ゛?』
声が聞こえたと思った次の瞬間
女の姿はかき消えた
慌てて辺りを見回すと
俺の遥彼方後ろに
凄いスピードで走り去っていく
女が見えた
『フンッ…おもしれぇ…』
思わず笑みがこぼれていた
~亜久津side end~
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