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中2の夏、僕はまたそこに訪れていた。
昔見た時よりも遥か下にその穴は存在していた。
僕はこんな僕でも成長するんだ、そう思った。
意味など無い成長、どんなに体が大きくなっても、どんなに背が高くなっても‥僕に友達は出来ない‥話すことすら出来ないのだ…ただ相手の手を見るしか相手が伝えたい事が伝わらない。
そんな事を思っていると、あの小さい穴に涙が滴り落ちた。
僕は蟻とは正反対だ…こんなに仲間が居て、こんなに動き回って…
いっそのこと蟻に生まれれば良かったとさえ思った。
そして、この時もまた、あの女の子に出会った。
彼女は悟ったように地面に字を書き出した。
‘いつも何してるの?’
僕は驚き、彼女の顔を見た。
その顔は良く笑顔が似合った。
その笑顔を見ると、僕の顔も自然に和らいだ。
僕は地面に返事を書いた。
‘蟻を見ている’
‘どうして?’
‘友達がいないから’
僕達はまたもや見つめ合った。
見つめ合って、そして笑った。
彼女の笑顔は本当に可愛いかった。
彼女はまたもや木の棒を動かし始めた。
‘じゃあ私達は?’
‘友達‥かな?’
彼女は首を縦に振った。
2人は暑い日差しに汗をかき始めながら会話を続けた。
‘暑いね?’
と彼女が地面にそう書くと
‘暑いね’
と返す。
僕にはそれが精一杯だった。
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