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あれから年月が経ち、大人になった僕は、度々蟻の巣穴を見る事があった。
そして、見る度に彼女を思い出すのだ。
思い出して彼女との最後の会話を思い出すのだ。
彼女は最後、僕にこう聞いた。
‘私の事好き?’
と…返事はまだ返せてない…もう返せない…
今日は同じ障害を持った人達と互いの人生を語り合うという交流会に来ている。
僕はあの事を思い出しながら、手話で皆に伝えた。
彼女と話し合ったあのノートを片手に握りしめ心の中で呟いた‥
僕も好きだよ、と…
その交流会の帰り道、僕は蟻の巣穴を見かけた。
蟻達は暑い日差しに負けずに、相も変わらず小さい穴を行き来していた。
完。
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