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汗を拭く道具を失った俺は必然的にどんどんすえていく。さらに持ち前のワキガも手伝って相乗効果だ。自分でもわかるくらいに俺は刺激臭の鎧を纏っていた。
正直に言うとこんな日は周囲の人間に近寄りたくない、そして近寄って欲しくない。俺がホームに下ると並んでいた客は酸っぱいものでも食べたように顔をしかめながら鼻をつまんで退いた。
あぁ悲しいかな、怪我の功名とでも言うべきか俺は悪臭にはこんな便利な面もあるんだということを傷ついた心を代償に学んだ。
結局列の最前に立つことができた。いつもはだいたい最後尾に並ぶので立つこともまちまちだが、今日は確実に座れるな。これぞ本当の臭う立ちだ!とか思いつつ仁王立ちで電車を待っていると早速来た。
電車の扉がぷしゅぅと音を立てて開いた次の瞬間
俺は、戦慄した。
なんと扉の側で立っているのは電車内でよく見かける女子、いわゆる気になる女の子というやつがそこにいたのだ。わかるかこの意味が。注意して通らなければ俺から放出されているスモッグが彼女の鼻腔から侵入し俺はたちまちに幻滅されてしまうだろう。
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