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そもそも、あれが穴から落ちてきた時点でアウトだ。携帯火器での破壊は不可能だし、仮に破壊できても内部に満載されているだろう爆弾の爆発で終わりに違いない。
「助けに来ましたよ」
絶望しかないこの状況で、カイの耳に忘れられない声が入った。この全ての現況であるフリスティナだ。彼女はその美しい顔をニコニコさせながら、落下していた弾薬輸送艦を消し去った。
「は……?」
理解出来ないと言ったフィーゼの間抜けな声。一度フリスティナに会ったことあるカイ達は驚かない。何故ならこいつに常識なんて通用しないからだ。
「あんた今、世界を繋がなかった?」
「さすが、異世界関連が発展した魔女。ご明察ですよ。あれは違う世界に飛ばしました。まぁ、何処かは秘密で」
フリスティナはもう答えるつもりはないとフィーゼを無視し、カイの前に立つ。
「戦いたく無いと言いつつも、生のために必死にもがき生き残ろうとするその姿。濡れそうよ」
「勝手に濡れて慰めてろ。全ての元凶が何を言うか。それにお前、そんなキャラだったか?」
頬を撫でようとする手を払いながらカイは言う。
「あら、私はオリジナルが生み出したあなたたちを異世界に飛ばすだけの存在よ。性格変えるなんて朝飯前」
払われた手を残念そうに引いたフリスティナは、その手でパチンと指を鳴らしカイにとっては四度目の異世界渡航の準備を始める。
「まだ日付は変わってませんが、既に渡航は可能です。一週間はあくまでも目安ですからね」
彼女は一ヵ所に集まるように指示しながらも、
「フィーゼ。あなたの部下と仲間は私が責任を持ってこの世界の安全な場所まで送りますよ。カイ達をこの世界で面倒見てくれたお礼ですよ」
「そいつは助かる。だそうから現時点で状況を終了する。各自、今後はニシャーの指示に従うこと」
了解の唱和。それを聞いてからフィーゼはカイの隣に立つ。
「それでは、次の世界で。また一週間後、迎えにきますね」
フリスティナがそういうと、一行は異世界渡航を始めた。
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