4.人狼少女と若き当主

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カイ達が飛ばされた世界は暗かった。と言うのもまだ太陽が昇りきってない時間だからだ。澄んだ冷たい空気と僅かに明るい東の空からそれは簡単に推測出来た。 「んで、ここは何処だ。見た限り庭みたいだが? それも金持ちの」 カイ達がいる場所は丁寧に手入れされた庭だった。砂利が敷き詰められ、小さな池に枝の長さを整えた木など明らかに一般家庭の庭では無い。 「此処は藤林の庭だ。よく来たな、異世界人達」 これからの行動に悩む一行に声がかけられた。声の方向は縁側だ。そこには小柄で腰まで伸びたボサボサ気味だが、見苦しく無い銀髪。そして狼の耳と尻尾を持つ少女だ。 その姿はまさに狼花だ。皆が一斉に構えると、その少女は花で笑う。 「その態度を見るに狼花の奴にかなり痛い目に会ってるみたいだな。安心しろ、私はお前ら側だ」 敵意は無いと軽く両手をあげて見せる少女。確かに敵意は無さそうなため、カイ達は構えをといた。 「玄関に案内する。そしたらまず休め。風呂と布団を用意してある。そこのガキ、船を漕いでるからな」 少女が顎で指す先には一気に緊張が解けたせいか、立ったまま寝かけているアルノがいた。そんな彼をサイレミアが抱き上げる。 「話は昼からだ。それまで此処で自由にしていたらいいさ。何でも使用人に言え」 縁側から降りてきた少女に案内されアルノは寝室に、その他一行は風呂へと向かう。広い浴槽で目一杯くつろいだカイはそのまま寝室に向かいすぐに眠りについた。
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