6人が本棚に入れています
本棚に追加
仕事から戻った母は、父を見るなり狂ったように泣き叫んだ。
そして、父の惨殺死体は、警察に囲まれ、どこかに連れて行かれ未解決事件となった。
それから暫くして起こった母の惨殺事件も未解決だ。
空子は、私が憎む相手を喰う。
私がその願いを空子に言うでもないのに、空子は、その相手を喰い尽くした。
何度その光景を見ても、私は美しいとしか思わなかった。
だから、ただ空子は喰い尽くせば良かったのだ。
私が憎む人間を、何も思わずに。
空子が18歳の時、私が憎む人間を空子は愛してしまった。
涙を流しながら、彼を喰う。
彼だけは、食べたくないの。
お姉ちゃん、助けて。
彼だけは殺したくないの。
そんなに愛しているなら、何故喰い殺すの?
金色の瞳から涙を流し、空子は愛する男の腕を鋭い爪の手で引き千切りそれを食べている。
食べてしまうの。
だって、お姉ちゃんが彼を憎んでいるから。
食べたくないのに、食べたくないのに!
彼はどんな味なの?
愛する人はどんな味?
私の投げた問いに、空子は答えなかった。
人間の味を覚えた化け物は、その味を求めてしまうのだろう。
愛している男は、今までの人間とは違う味なのだろう。
それから、空子は涙を流しながら人を喰うようになった。
何故なのか分からないが、空子は私の憎しみを喰い生きている。
私が憎しみを無くさない限り、空子は死ねない。
化け物なのだから、人間の感情を、人を愛する気持ちを持たなければ楽なのに。
――私のように。
本当の化け物は、私なのかもしれない。
―END―
最初のコメントを投稿しよう!