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ハナが決めたことを、タイシは逆らわない。
タイシは、
「分かった」
と言う。
タイシには今、自分がどんな顔で分かった、なんて言っているのかよく分からない。
なんだか泣きそうな気持ちのようでもあるけれど、諦めたフヌケのような顔かもしれない。
「私立は電車だからタイシと家を出る時間が合わなくなるね」
とハナがいうのを、タイシはあまり聞いていない。
きっと、タイシが何を言ってもハナは私立に行くことをやめないのだろう。
ハナはプライドが高い。
嘘が嫌いだ。弱い自分が嫌いだ。うじうじ悩むのが嫌いだ。口にしたことを曲げるのが嫌いだ。
タイシよりも男らしい。
タイシが悩んでいることと言えば、今、この瞬間、ハナの手を強く握るべきかどうかということだけだ。
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