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蛍光灯の灯る廊下を、美月は全力で走っていた。
壁に張られた仲間のポスターが何枚も後ろに流れていく。スタッフさんが驚いたように、何人も道を空けてくれる。
階段を降りようと角を曲がって、危うくメイク道具を抱えたメイクさんにぶつかりそうになった。何度も頭を下げて謝ると、弾かれるように階段をかけ降りる。
名前を呼ばれたような気がする。けれど既に踊り場を過ぎていた。
心臓がばくばくいってる。
でも、全力で走ってるせいだけじゃない。
個室に呼ばれて、プロデューサーさんに言われた言葉が忘れられない。忘れたくない。
飛び降りるように一階にかけ降り、出口から外へ。自動ドアが開くのを待つのさえもどかしい。
出口の灯りから少し離れたところに、スーツを着た人影。「お外で待ってるからね」、そう言っていた人は、飛び出そうと息を切らせている美月を、じっと見つめていた。
「お母さん!」
伝えたい思いが心の中を渦巻く。
自動ドアを飛び出して、母の胸に飛び込んで。
「受かってた!」
それだけ叫ぶと、美月はそのまま泣き出した。
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