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この学校は、はっきり言って荒れている。
僕の学校も地元ではそこそこ荒れた高校だったが、この学校は比にならない。
『授業は真面目にやらなくて大丈夫だから。』
校長が笑いながらそう言ったのを思い出して、苦笑した。
《確かにこれじゃ、無理だよな…》
出席者、40人中10名。…しかも全員僕の話を聞く気はない。
「今日から2週間、授業を受け持つ事になった山川良樹です。よろしくお願いします。」
10名は会話に夢中で話を聞く様子は全くなかった。
まぁ、これは仕方ないのかもしれないと、半分諦めかけていた。
「じゃ、授業するよ。」
黒板の落書きを消した、瞬間だった。
『教育実習生さんだっけ?…何してんの』
「何って、授業をするため…」
『その黒板、2時間の超大作なんですけど?』
…まさか、地雷踏んだか…?
「…黒板は、落書きの為の物じゃないからね」
『あ?…喧嘩売ってんのかよテメェ…!』
1人の女生徒が立ち上がり、僕の方へ向かってくる。
本能的に後退りをするが、黒板が僕の行く手を阻む
《ヤバイ》
そう思った時だった。
「出しゃばるな、皆川。」
窓際後方。
この学校にしては地味な格好をした、1人の女生徒。
『…ス、イーツ…』
立ち上がった皆川という生徒が、一瞬たじろぐ。
『私はな、このアマにこの学校の厳しさを教え…』
「…やるか?」
『…っ!』
「…やめとけ、俺もお前なんかとやりたくないからな」
それを聞いた皆川は、舌打ちを一つすると元の席に戻った。
安堵のため息が漏れたと同時に、“スイーツ”から声が掛かる。
「山川」
「…何だ?」
「後で用がある。」
こういう呼び出しは大抵良いものでは無いことくらい、誰だって分かる。
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