プロローグ

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「山川は居るか」 昼休みの職員室、“スイーツ”が現れた。 “スイーツ”に関しての情報は、余りに少なかった。 教師に彼女の事を尋ねると、口を揃えてこう言うのだ。 『彼女は味方にするべきだけど、決して“スイーツ”以外の名前で呼んではいけない』 それだけ。 「用がある、って何だ?」 「…お礼」 「は?」 「さっき庇ってやったんだから、お礼の一つくらい、しろよ」 僕は一瞬、何を言っているのか分からなかったが、それが先程の授業の事だと分かると少し安堵した。 本当はもっと恐ろしい事を言われると思っていたから。 「そうだな、悪かった。…で、何をすればいい?」 「甘いもの」 「…え?」 「甘いものよこしな。」 「…甘い、もの?」 呆気にとられて、しばらく突っ立って居た気がした。 「テメェ、やられたいのか?」 「え、あぁ、悪い…ちょっと考え事を。」 「何か持ってないの。アメとかガムとか」 僕は今朝買ったばかりの飴が、鞄に眠っている事を思い出した。 「飴なら持ってる。それでもいいか?」 「…5個な」 分かった、と軽く告げて、僕は自分の鞄の中の飴を引っ張り出した。 イチゴ、レモン、メロン、ブドウ、リンゴ。 見たことのない飴だったから、大学の奴らにでも配ってやろうと思って買った物だが… 九死に一生を得たのは、彼女のおかげであることは間違いなかった。 「これで良いか?」 「…今回は何でも良い」 彼女に飴を手渡すと、彼女はポケットにそれを突っ込んで、再び僕を見た。 「…まだ何かあるか?」 「アンタ、あんまりこの学校ナメてると、死ぬよ」 「あぁ、何となく分かったよ」 此処は普通の私立高校ではない。 不良達の巣窟だと、今日1日だけで痛感した。 「…死にたいか?」 「そんな風に見えるか?」 「…だな」 “スイーツ”はふっと下を見て笑うと、再び僕に視線を戻す。 視線がぶつかる。 .
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