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「そうと決まれば早くこっちへ来い」
大貴はテレビ画面から視線を動かすことなく、萌映に声を掛ける。
「待ってください、
まだ終わってないんで」
「んなもん後で良い」
「だめです。
時間経つと取れにくくなるんです」
「………」
私は何も返事をしない大貴を特に気にせず食器洗いに集中していた。
だから大貴の顔を全くみていなかった。
最初に静寂を破ったのは大貴だ。
「......第一、俺の言うことは聞け!」
「え?」
なんとも間抜けな声が出た。
「逆らうなと言うことだ」
思いっきり青筋を立てて、こちらを見ていた。
大貴は言ってやったと言う感じだろうか。
反応に満足したのか、こちらを見てにやりと笑った。
「...拒否権は?」
「今逆らうなと言ったばかりだろう」
魔王だ。大魔王がここにいる。
独裁者が目の前にいる。
「洗い終わったら早くこい」
もう一度こちらを見て再びテレビに視線を戻した。
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