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《すまない…》
｢！｣
唐突に｡
映写機の消えた真っ白な空間に､耳触りのいい円やかな声が響いた｡
背後からの声に振り向くと､中性的な顔立ちの人物が佇んでいた｡
柔らかそうな長い金髪に､純白の長衣(ﾛｰﾌﾞ)…翼こそなかったが天使を髣髴させる出で立ちに､思わず眉間に皺が寄った｡
なにコイツ､コスプレイヤーかなんか？ それとも､病院から脱走してきた頭の可哀想な人なのかしら｡
｢なにが…？ つーか誰？｣
出た声は､存外に低く険のあるものだった｡
目の前の人物の表情が強張るくらいだから､相当だったのだろう｡
《私は､この世界を管轄する神だ｡まだ寿命ではないそなたを､手違いで死なせてしまい…本当に済まない｡本来ならば､駆け込み乗車をした彼女が転落死する定めだったのだ…》
｢…それで？ こんな今頃､謝りに来たんすか？ 神様とやら｣
《そうだ》
逸らしもせずに､真直ぐ見つめてくる自称神｡
誠意の滲む､真摯な眼差しだった｡
れど､だからこそ逆に腹が立った｡
｢でも､私は死んだ｡もう取り返しがつかないことくらい､貴方が一番よく知ってるんじゃないの？｣
平謝りする金髪を､昔とった杵柄の名残で睨みつければ､彼はビクンと震えて居住まいを正した｡
《“この世界”ではムリだ､そなたの肉体は既に荼毘に付されているゆえ…だから､ここではない別の世界に命を与えてそなたを移そうと思うのだが…どうだろう？》
おどおど…そんな擬音がぴったりな仕種でこちらを窺う様子に､コイツが本当に神で大丈夫なのか本気で不安になった｡
｢アンタ神なんでしょ｡
手違いとかどういうコトよ！？ ニ三注文つけさして貰わなきゃ気が済まないわねッ｣
《な､なんなりと言ってくれ｡できる限り手を尽くそう》
｢私を移す予定のその世界って､どんな所？｣
《現代のように文明は発達していないが､そこそこ住みやすい…》
｢はああ！？ とか言って､変な僻地に送ったりしたら承知しないわよッ｣
変な汗をかいている金髪の様子からも判るように､多分コイツは嘘を吐いている｡
彼が嘘を吐いていることを嗅ぎ取ったリサは､ぎろりと自称神様を再び睨みつけた｡
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