1.むかしむかし

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──パタン。 私はゆっくりと"グリムの裏側"と書かれた本を閉ざした。 窓からは黄金色を帯びた光が差し込み、表紙を照らしている。 「ぁ…すてき」 さっきまでは表紙を気にしていなかったため、ちゃんと見たのは初めてだ。 そこには、赤いずきんをかぶった女の子が森の中で座りこんでいて、耳の生えた男の子が手を差し伸べていた。 表紙はヨーロッパ調の絵で、とっても神秘的。 でも二人の表情は少し悲しげで…それでもしっかりと、お互いを見つめあっている。 まれで恋人みたい…。 表紙から出入口の近くにある時計へと目を移したら、すでに針は下校時間に指しかかっていた。 その本とお目当てだった参考書を持って、私は急いで受付に向かった。
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