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月夜。
そうとしか表現出来ない夜だった。月明かりが照らす廃墟に私は立ち尽くしていた。
私は背負った身の丈ほどの大太刀を抜くと、息を殺した。ターゲットが周りに迫っているのだ。
数はざっと百単位。一対多数だが、そうでなければ面白みはない。
私の後方、瓦礫の物陰から敵が飛び出す。どこぞの類人猿みたいな奴らだ。槍を持った二人が飛び出したようだ。
「せっ、はっ!」
振り向いた私は軽く大太刀を振るい、まだ滞空してる二人を両断した。類人猿二人は真っ二つに割れて、どちゃりと生々しい音を立てて落ちる。
仲間の死を見て、物陰に潜んでいる残りの類人猿が逆上した。怒りに身を任せた突撃は、先程の不意打ちと違い荒々しい。
「っ……!」
それすら私は大太刀の二振りで薙ぎ払う。割れた類人猿の死体が五つほど増えた。
遠くから雄叫びが聞こえる。類人猿が大挙してこちらへ向かってるのだろう。
私は無言で、類人猿らしき黒い人だかりへと駆けて行った。大太刀を構えて。
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もちろんこれは現実の話ではない。私は今、あるゲームをしているところなのだ。
プレイヤーがキャラクターと同化するフルダイブシステムを搭載した新世代のオンラインゲーム。
『ブレイドクロニクルオンライン』
その世界で私は、狂戦士と呼ばれた。
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