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  母上は左遷された父と文の送り合いをしていたそうだ。   父は沢山の仕事を押し付けられ、大変酷い扱いを受けて理不尽な環境だと思うのにそんな事は微塵も書かれていなく、それが逆に母上の涙を誘った事。   緑が豊かで、秋には金の絨毯が敷かれているのかと見紛うほど見晴らす限り輝く稲穂が実り、初秋は大変驚き、黄金郷にでも来たのかと思ったほどだったと書かれていた事。 (そういえば立たれた季節は秋だったと感慨に更けたら母上に叩かれた。)   そして、今回の文には少しの暇と土地を貰えた事が書かれていたらしい。    「連理や連理、これで私達もこの地を離れ父と再び幸せな日々を送れる日が来ようぞ」    そう言うや否や、母上は荷造りに勤しむ為来た時と同じような素早さで屋敷の奥へと消えて行ってしまった。   嵐のように去って行った母上の後姿を見送りながら、父上が居た頃でさえみた事の無い程の母上の破顔と士気の上がり様に呆然としていると庭の住みから視線を感じた。  
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