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辿ってみれば、何かの拍子で零れそうなほど、大きてまん丸と下目でこちらを見つめている弟だった。
「椿…」
三つ下の可愛い弟の名を呼ぶと椿はにこ、と笑ってとてとてと側に寄ってきた。
「にいさま、にいさま、あのね…」
大体予想はついているが、どうかしたのかと抱き上げると
「かあさまが、とうさまから文がとどいたんですって…」
それで?と先を促すように背中をゆっくり撫でてやると首に手を回してぽつりぽつりと続ける。
「にもつをまとめなさいって、…ここをはなれるんですって…かあさまがおっしゃったの」
……それがこわいのです…
途切れ途切れに口に出し、ふるふると最後に言った言葉は小さく、近くで鳥や虫が鳴いていたら聞き取れない程だった。
「椿はここから出る事が不安なのか…?」
顔を埋めて小さく頷く。これは甘えている証拠だ。
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