その名はストレイド

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その名はストレイド

国家解体戦争から数十年。 生存を賭け、競うように生み出された新兵器は、節度ある賢明な経済主体であったはずの企業により、その力を、環境の蹂躙という形で披露する。 大気と土壌の汚染が深刻化した世界において、企業は危機的状況に陥った生活圏から脱すべく「クレイドル」と呼ばれる巨大空中プラットホームを開発建造。人類の過半数は高度7000m以上に設置されたクレイドルへ移住し、新しい清浄な生活空間をもたらいていた。 その一方で、かつて戦場の覇権を握った人型兵器アーマード・コア「ネクスト」とその搭乗者「リンクス」は、その圧倒的な力の、個体依存性に危機感を抱いた企業により、企業機構「カラード」管下の傭兵として、地上に残された。今や、企業軍の主力は、巨大兵器アームズフォートであり、かつて地上を支配したネクストたちは、薄汚れた地上で延々と続けられる、経済戦争の尖兵と成り果てていた。 企業が世界の均衡を危なげなくコントロールし、揺り篭に住まう雛鳥たちだけが、硝煙のにおいから逃れ、安全を保障される。 新たな格差が生まれると共に、世界は無慈悲な安定へと向かっている。 誰もがそう考えていた。
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