その名はストレイド

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「では、早速明日の朝にはカラードに出向くとしよう」 「全は急げ、か?」 男が投げかけた言葉に、セレンは口の端を吊り上げ、微笑する。 「時は金なり、だよ」 ネクストを維持、運用するだけでも相当な金がかかる。 男としては気に留めたことも無かったが、コロニーの住民の事もある。 守銭奴とも取れる発言の裏には理由があった。 セレンは車椅子を漕いで扉へと向かう。 ガレージを出る直前、セレンは車椅子を止める。 男に向き直りもせず、こう言った。 「カラードに登録するんだ、名前を決めておけよ。明日からがお前の、第二の人生だ。悔いのないようにな」 男には名前がなかった。 親の温もりを知ることなく、この荒廃とした世界を漂ってきたからだ。 呼ばれる分に関しては代名詞でも困らなかった。 故に必要ない、とすら思っていた。 「名前、か……」 急に言われても困ってしまう。 自分には、気の利いた名前をつけるほどのセンスはない。 「ストレイド……」 セレンと共に付けた名前。 「ストレイド・ニージュ」 これからの愛機となるネクストの名前。 ストレイドの弐号機という意味を込めて。
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