その名はストレイド

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「セレン、話しってなんだ?」 男は椅子に座るなり口を開いた。 そこは質素な部屋だった。 コンクリートを材質にした灰色の空間。 窓は無く、当たり前だがカーテンも無い。 天井には小さな電球が一つぶら下がっており、いつ切れてもおかしくないエナメル線を煌々と点滅させている。 「ああ、ちょうどいい頃合いだと思ってな」 神妙な顔付きをした女性が、口の端を吊り上げて微笑する。 車椅子に腰掛けた女性「セレン・ヘイズ」は言葉を発した。 「お前に拾われてから、もう6年になるか」 威圧感のある深い声だった。 だが、決して攻撃的ではなく、その内に少しばかりの優しさを含んでいる。 「今日は私とお前が出会った日だ。この6年間、お前のAMS適性を見込んで訓練を施してきた。最初は私とお前の二人きりだったこの場所も、今はお前の働きで小さなコロニーと呼べる程にはなった。そこでだ……」 セレンは一呼吸おいて言葉を紡いだ。 「私はお前をカラードに登録しようと思っている」 男に驚いた様子はなかった。 来るべき時がきたかと、そう思っていた。 だがしかし、男には疑問があった。 「ネクストはどうする。流石にノーマルではどうしようもない」 男の疑問は最もだった。
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