視線

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「潤希って、意外と恋に慣れてないよなー。 付き合うときも、告るの女からだろ?」 言われてみて、ふと気づく。 「………ああ、まぁ。 確かに、告ったことってないかも。 そもそも、そんな健全な恋愛ってしたことないかも………」 「っかぁー!! モテる男は言うことが違うねぇ~」 どんっとジョッキをテーブルに叩きつけるように置く。 おいおい、ジョッキが割れるっ。 お前は酔っ払いの親父かっての! 俺はジトっと智也を見る。 「………お前にだけは言われたくねーよ。 智也も似たようなもんだろ? 特に合コンなんてさ、試しに付き合ってみるかーって流れだろ」 「まぁ、合コンがきっかけで付き合い出したら、大抵脆いよなー。 そうかそうか。 だからお前、今まで長続きしなかったんだ」 「別に去る者追うほど思い入れがあったわけでもねーしな」 「うっわ………。 この女泣かせ」 「ばーか。 告る女を片っ端から振ってくお前ほどじゃねーよ」 智也はモテる。 顔立ちも整ってるし、性格も明るく社交的だ。 俺はこいつと高校のときから友達やってるけど、その頃からずっと一人の彼女と付き合ってる。 合コンに誘いにくるし、ときどき参加するからよく独り身だと勘違いされて告られるけど、智也は一も二もなく断っていた。 「まぁな、俺は一途だし。 じゃあ、そんな恋の先輩からアドバイスだ。 潤希はとりあえず話しかけろ。 もっと積極的になれよ。 なんかあれば仲持つしさ」 話しかけろって言われても、視線に気づく前に見つけたことってない。 気づいたら踵を返して行っちゃうし。 積極的になる以前の問題だと、俺は肩を落とした。
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