視線

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今日は滅多にない講義の久しぶりの授業だった。 前の講義が長引いて開始時間のギリギリに講堂に着くと、そこはもうほとんどの席が埋まっていた。 空いている席を探して降りて行くと、講堂の中ほどで見つけ、隣の席になる人物を見やる。 「ぁ………」 黒髪を二つに束ねた、女。 彼女は俺の声に気づいて振り返った。 「……あっ………」 彼女も俺に気づき、驚いたようにガタリと席を立とうとする。 それを制して出来るだけ普通を装った。 「驚かせてごめんね。 隣、良いかな?」 女はこくりと首肯した。 驚いてはいるみたいだけど、怯えてはいないみたいだ。 とりあえずほっと肩を撫で下ろした。
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