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「そういうこと言ってんじゃないわよ!この変態男!」
手足を拘束されているにも拘わらず、今にも噛みつきそうな剣幕だった。
獰猛な獣と言われても差し支えない。
つまりはこうだ。
彼──榊原 潤は、わざと彼女に媚びへつらい、警戒心を緩めつつ近づき、差し出すかのように食べ物を献上した。
しかしそれには睡眠薬が混ぜてあり、まんまとそれを口にした霧が不覚にも眠気に襲われ撃沈。
乗じて彼が暴れられぬよう縄で拘束した、という事であろう。
なんという卑怯・外道。
「黙らっしゃい!ついでに俺は変態じゃない、善良とした紳士──ジェントルマンだ!」
カチンと頭にきたのか、潤は怒り心頭気味に怒鳴り返す。
普通に考えて、この状況を第三者が見たら皆こう思うだろう──変質者だ、と。
「おい、楠葉......いや、“氷の女王”」
地に伏せる彼女を見下げるように、潤は名前ではなく別の呼び方で彼女に話し掛ける。
氷の女王──それは彼女の第二の呼び名でもあり、自分自身で決めたわけではない。
彼女──楠葉 霧は不良である。
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