─第15章─

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────────…… 定時になると社内には、椅子のキィッという音が響き渡った。 残業組じゃない社員が帰り支度を始めると、カツカツとヒールの音を鳴らし、加賀さんが早見さんの席へやってきた。 わかっているのに、胸が苦しくなるって…。 小さいよなぁ、私。 秘密の関係も今日で終わりだ─… 昨日、早見さんがそう言ったのだから、あと少しの我慢。 「みーおーちゃん。 なーんか泣きそうじゃん?」 若狭さんが面白いものを見つけた子供みたいに、楽しげに声をかけ顔を覗き込んできた。 「………。」 「辛いでしょ?あんなの見せつけられたら。」 「…若狭、矢野をからかうなよ。」 木戸さんが立ち上がりながら溜め息混じりに言うと、 「からかってませんよ。 現実をわからせてあげるのも優しさかと思って。」 にっこりと笑顔を向けた若狭さん。 「…優しさじゃなくて追い込みだろ、それ。」 「やだなぁ、先輩。 そんなわけないじゃないですか。 むしろ両手を広げて、待ち構えてるんですから。」 「………。」 木戸さんは呆れたように若狭さんを見つめた。 .
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