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この日は梅雨前線が上空にのしかかり、洪水の危険が垣間見える程の大粒の多量の雨。
そんな天気ならば、当然川なんかは暴れ狂って濁流を巻き起こして、生物を喰らう化物と貸す。
そんな一大事だから、人々の未来予知にはこの川の氾濫も必ず含まれていて、よっぽどの事がない限りこの川に近付こうとしない。
と言う訳で、どうやら今にも崩れそうなぐらぐらの足場に立っているマシンガンを携えた兵士達はよっぽどの事があったらしい。
雨にずぶ濡れとなった黒いヘルメットの下で、よっぽどの事に表情一つ変える事も出来ずに佇んでいた。
目の前に轟音を立てて人を飲み込もうとしている川があるから。
そこに、自分から飛び込んだ少女がいたから。
自分から。
助かろうとして。
兵士達の銃弾から。
「なぁ……死んだよな……あれは」
「……た、助かる訳ねえよなぁ!? ざ、ざまぁみろってんだよ! 未来予知するまでもねぇ、やったぞ! 俺達ヒーローだ! 人類を救ったんだよ!」
「あ……ああ!」
兵士達の歓喜の雄叫びに抱擁。そこでようやく自分達のいる場所が銃を構えていようが防弾チョッキを着ていようが危険な場所だと悟り、少し川から離れ、再び喜びを分かち合う。
「終わりにするな。阿呆共」
兵士達の動きが止まる。声が聞こえたからだ。鶴の一声、彼らにとって恐怖すべき“上官”の声が。
兵士達は後悔した。
どうして“偽りかもしれない勝利に酔いしれて喜んだ”後の未来を見てからにしなかったのか、と。
見ることが出来なかった未来を信じてしまったのか、と。
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