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その日は祖父にしては珍しく、
夕刻になってもまだ一匹の獲物も仕留めることが出来ずにいました。
帰る時間も近づき焦りが出てきたのか、
そのときは「どうもおかしい……」とか「どうなっているんだ」といったことをしきりにつぶやいていたと思います。
今思えば、祖父は長年の経験から山の様子などに、いつもと違う
なにか変化のようなものを感じ取っていたのかも知れません。
あれを見たのはそんな時でした。
「なんだ? あれは」
怪訝そうな祖父の視線を追ってみると、岩場と木立の境界あたりに動物がいて、魚を食べているようでした。
「猿……か?」
言われてみると確かに猿にも似ているのですが、私には猿には見えませんでした。
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