[プロローグ]

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ろうそくの数を数えてみると1、2、3、・・・5本。円を描くように配置されている。その朧気な灯りから見える周りの様子は、どうやら部屋の中のようだった。奥の方に見えるドア。窓は見あたらない。どこかの地下室だろうか。しかし風もないのに不自然なほどの寒さが満ちていた。 うすぼんやりと見える部屋の中に目立つものが3つあった。1つ目はろうそくに囲まれるように置かれた赤い壷である。かなり大きいためろうそくの灯りは入り口付近を照らすだけに留まっている。 2つは床に描かれた魔法陣である。5つのろうそくを円で結ぶような線と円の内側で星を描き細かい文字が書かれている。見えないが勿論壷の下にもなにかしら書かれているだろう。戦闘の高速化が進むに連れてパワーはあるが時間のかかる魔法陣より詠唱者本人の力に依存するもののスピードのある詠唱魔術の方が今は主流である。今やほとんどの魔法陣は戦争で失われ、数少ない残ったものだけが古き書物の中に眠っている。 今、魔法陣を使うのは何人もの魔術師を動員して、やらなくてはいけない疫病に冒された土地の浄化などの大がかりな時や、契約魔術などの異世界魔物を呼ぶときの扉として使うだけである。 3つ目はその壷の前でぶつぶつとつぶやき続けている男である。土下座のように頭の地面につけ体を縮こませ、途切れることなく喉を動かしている。 魔法陣の数少ない利点としてそれ相応の供物を捧げれば、魔力のない人間でもある程度の行使が可能である点が上げられる。どうやら男は壷の中の物を捧げ、何かを異世界から喚ぼうとしているようだ。
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