壱ノ変

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 ああ、あたしの馬鹿ッ。  と、我が身の愚かさを呪ってみても、時すでに遅し。  三体目を成敗しないと湯からは上がれない。  ああ、めんどくせぇ。  何でこんな目に。  しかも何でここ混浴なんだ?  そんなの聞いてなかったぞ。 「混浴なら混浴と最初から言ってくれれば」  絶対来なかったのに。  しかしあたしの呟きに、桂はきょとんとした顔。 「混浴?」 「そうですよ。女湯だけってないんですか?」 「女湯・・・そんな温泉はあまりないんじゃないか?」  マジすかッ!!  混浴が標準すかッ!!  桂が嘘をついているようには見えないし。  晋作ならともかく。  あいつは平気で嘘をつくからな。  あたしの晋作に対する信頼は地に落ちて地べたを這っている。
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