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「そんなことより、一杯やろう」
桂はとくとくと盃に酒を注ぐ。
距離はまだ詰めて来ない。
さすがに慎重だ。
桂はひとつ盃を取ると、腕だけ伸ばしてお盆をこちらに差し出した。
「ありがとうございます」
あたしは警戒しつつ腕を伸ばしそのお盆を取る。
「もしかして酔わせてって考えじゃないですよね」
「何がだい?」
あくまでとぼける桂。
やるな。
「じゃあこっち向いて下さい。嘘じゃない証拠にあたしの目を見て下さい」
あたしの言葉に、桂は素直にあたしを見た。
よほど自信があるのだろう。
あたしと桂はしばし見つめ合う。
やがて桂に下心の兆候が現れた。
視線が、時々下がっては慌てたようにまた戻るのだ。
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